『カラシニコフ』 松本仁一

 旧ソ連で開発された銃・カラシニコフ(AK47)を中心にアフリカの貧困や治安の現状を取材したルポ・ルタージュ。朝日新聞の連載を基にしたものらしい。サハラ以南アフリカの問題を生々しく著述している。

4022579293カラシニコフ
松本 仁一
朝日新聞社 2004-07-16



 第1章はシエラレオネ。元少女兵を通してかの国の現状を語る。
 第2章では銃の開発者であるカラシニコフ氏のインタビュー。この銃の優れている点が語られる。
 第3章では国家が崩壊しているソマリアの現状。
 第4章ではフレデリック・フォーサイスへのインタビューを通して赤道ギニア、ルワンダ、ザイールについて語られている。
 第5章では南アフリカの現状。これを読む限り絶対に2010年のワールドカップで南アへ行きたいとは思わない。友人にも勧めない。
 ここまでの記述ではアフリカに対して全く希望を抱けないが、第6章でかすかな希望を抱く。ソマリランド。ソマリアが無政府状態になっている中、北部の都市ハルゲイザを中心としてソマリランドという新たな自治区ができあがっている。




 この本から「国家とは何か」というわかっていそうでわかっていないことを、法学とは違った観点で知ることができた。

 「失敗した国家」「失敗国家」という言葉。国家が失敗という言葉で形容されること自体に違和感・新鮮さを感じたのだが、問題となるアフリカの国々はまさにこれに該当するとのこと。フォーサイスの言葉らしいが、「失敗した国家」とは国づくりができていない国、政府に国家建設の意思がなく、統治の機能が働いていない国のことを指す。

 日本人である限り当然に国民の間で醸成されている統一感・国家感をアフリカの国々では持つことができない(アフリカに限った問題ではないが)。それはもちろん欧州列強が勝手な国境線を引いた結果に他ならない。さらにそれらの国に対して、冷戦のもと、共産主義化させないという理由だけで独裁国家を欧米が支援していた。冷戦後もそのまま国体が継続する、もしくはバランスが崩れてさらにおかしくなるという国々が多く存在している。。

 産油国で国が潤っているはずのナイジェリア国民は貧困にあえいでいるし、同様にダイヤモンド産出国のシエラレオネも国民は貧しいままだ。NGOが拠出するお金も結局は政府のどこかで消えてしまい、末端の国民に渡らない。

 新聞記事などでは真実かどうかもわからないような遠い国の出来事が、現地取材を通して鮮明に描かれている。いろいろ考えさせられる名著。写真も多く、上っ面ではない取材を通してアフリカの真の問題が見える。

 この本を読んだのは昨年10月か11月頃だったが、その頃からソマリア沖の海賊問題は急速に新聞を賑わすようになってきた。自衛隊派遣を含めて日本の政治問題にまで発展した。なぜソマリアで海賊が横行しているのか、その根っこが本書を読むことによって少し理解できた気がする。ソマリアだけではなく問題の多いアフリカ諸国。ソマリランドの自治のみがアフリカの希望に見えた。
[PR]
by vamos_tokyo11 | 2009-01-18 01:36 |


<< 東京ドロンパ さっかりんの中の... 『アメーバ経営』 稲盛和夫 >>