『グーグル革命の衝撃』 NHK取材班

 NHKスペシャルの書籍化

4140811927NHKスペシャル グーグル革命の衝撃 (NHKスペシャル)
NHK取材班
日本放送出版協会 2007-05



 これまでのグーグル本とはこの本は違うという宣伝文句が前書きで書かれている。確かに直接インタビューしている箇所があるのだが、本を構成しているほとんど(感覚的に90%以上)はこれまでもどこかで語られていたような内容だ。そういう意味でちょっと肩透かしをくらう。もしくはこの本の取材が2007年初頭までのものだから、それから1年半以上経って既成事実として認識されているものが多いからかもしれない。

 今まで何冊かグーグルに関する本(『グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する』『Googleを支える技術』など)を読んだが、今読むならこの1冊でエントリから今後考えられる変化までを体系的に読めてよいかもしれない。さすがにNHKスペシャルだけあってよくまとまっている。




 監視社会への不安などについても書かれているが、これについては『グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する』でも指摘されていたと思うし、いろいろなところで話題に上っている。そういったどこかで書かれている話ではなく、この本で最も興味深かったのは234ページからの東京大学小宮山総長(当時)の「グーグルは『知』ではない」という節だ(これは2007年の東大入学式で述べられたものらしい)。かつては知識を得るために多くの文献を読み、情報を自ら整理していた。情報収集に膨大な時間と手間を掛けていたとし、以下の様に語っている。

その作業を通じて頭の中で多様な情報が関連付けられ、構造化され、それが『閃き』を生みだす基盤となっていたからだ。インターネットで入手した、構造化されていない大量の情報は、『思いつき』を生み出すかもしれないが、『閃き』を生み出すことは稀だ。頭の中に、いかに優れた知の構造を作ることができるか、それが『常識を疑う確かな力』を獲得する鍵なのだ。
(中略)
ここでいうインターネットはグーグルに置き換えて読んでもよく、検索サービスは情報を整理する手段でしかなく、構造化された「知」とは異なるものだ。(中略)グーグルのおかげでどこにあったかわからない断片的な情報も分かるようになった。確かに革命的だが、しかしそれが知だと思うと危ない。これは、人の頭の中に相互に知が関係し合って全体像を作るという構造とは全く違う
(中略)
(アンモニアの合成による肥料合成と爆薬の関係を例示し)あらゆる技術には光と闇がある。グーグルは、その落差がかつてないほど大きいのかもしれない。そこに僕らは不安を感じる。なぜなら、人間の脳、人間の知に直接関係するからだ。爆薬が作れるくらいの話とはわけが違う。

 この指摘は心に留めておいた方がよさそうだ。

 エピローグでは著者の息子の友人が大学で論文を書くときに、検索結果からコピペで済ますということに対して懸念を表明し、若者だけではなく我々も自ら思考し判断する力が衰えている可能性があると指摘している。これから衰えていくのではなく、今現在衰えている可能性がある、と書かれていたことにドキッとした。

 本のほとんどは事実とこれからの世の中の移り変わりの話でどこかで聞いたことのある話ばかりだが、最後の最後に出てくる、人間の脳に作用している何某かについて書かれているところこそが、実はこの本の一番重要なところかもしれない。
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by vamos_tokyo11 | 2009-01-27 23:41 |


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