『新版 再現!巨大隕石衝突』 松井孝典

 これはおもしろい!単純にワクワクした。

4000074954再現!巨大隕石衝突―6500万年前の謎を解く (岩波科学ライブラリー)
岩波書店 2009-02



 6500万年前の巨大隕石衝突の跡であるチチュルブ・クレーターの調査や、その関連でキューバの地層を調査したことによりわかったことを簡単にまとめたのが本書。素人にもわかるように平易に書かれていて、書き口も語るように書かれているため非常に読みやすかった。さらに図もふんだんに入っているため(ページがまたがって読みにくいという難点はあるが)理解しやすい。




 地層の話もそこそこ面白のだが、一番興奮するのが津波の発生の話(P74)。直径10kmの隕石がカリブ海に衝突したとき、トランジェット・クレーター(一時的に形成されるクレーター)が深さ30km。地殻の厚さが30kmだというので、地殻が瞬間的に吹き飛ばされてなくなる。その際にマントルが出てきて融けてしまうらしく、結果としてクレーターの深さは数kmになるそうだ。ただ、一時的に深さ30km、直径100kmのクレーターができる。もし水深3kmくらいのところに30kmの深さの穴があくと、そこに向かって水が一気に戻ってきて、慣性が働くために戻る水の流れがとまらず、高さ10kmもの水柱ができるという。これが津波となって世界中に広がった。実際に見ることなんてできないから、CGで見てみたいと思った。

 最終的にこういう爆発が起きると地球環境へどういう影響があるんだよ、ということが後半に書かれている。隕石が激突する予測はかなり高精度でわかるらしいのだが、確率的にこの規模の隕石がぶつかるのは数千万年に一度らしい。著者曰く、隕石激突による人類滅亡を心配するよりも、現在の文明生活が続けられるのは100年くらいなので、地球に及ぼす環境の影響を考えなければならないと説いている。地球環境に影響する物質などは、隕石爆発の調査から類似性が見られたりするそうで、著者専門の比較惑星学(そういうのがあるのは知らなかった)などで研究されているそうだ。本書では例示もされていて抜群に説得力があった。

 P119からのエピローグにそのことが書かれている。

 原因は異なりますが、巨大隕石の衝突によって地球システムに生じた擾乱(じょうらん)と同じような擾乱を引き起こしているのです。それがどのように地球システムに吸収されるか、それが地球システムと調和的な人間圏を設計するためには必要不可欠な情報です。その情報は過去の同様な事件を通じてしか得られません。地球環境問題など文明の問題を解決するのは、本書で紹介したような古文書の解読という科学的挑戦を通して以外にはないのです。


 多少我田引水な感じもするが、それでもとても説得力のある言葉だ。


その他メモ

 K-T境界層  白亜紀(Kreide)と第三紀(Tertiar)の境界(共にドイツ語。第三紀のaはウムラルトを省略)。最近はK-P境界層というらしい。

 イリジウム 爆発により隕石から蒸発して破片が地球にばらまかれた。地球ではコアに取り込まれてしまっているので通常は地殻に現れない元素。
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by vamos_tokyo11 | 2009-08-09 08:39 |


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