『航空機は誰が飛ばしているのか』 轟木一博

 現役の国土交通省官僚による本

4532260582航空機は誰が飛ばしているのか(日経プレミアシリーズ)
日本経済新聞出版社 2009-10-09



 航空機は誰が飛ばしているのか、航空会社でしょ、という本ではなく、航空管制の仕組みや現在の航空問題の解説をおこない、これからの日本の航空戦略を語っている本。

 かなり異色な本で、マニア向けな記述が多い。特に最初の三章は航空機がどれくらいの間隔を空けて飛ばなければならないかとか、着陸に対する地上から飛行機への指示はどのようにされているかとか、風向きによって使用する滑走路が変わってきたり、飛び出しの方向がかわってくることとか、これらによって発着容量(単位時間当たりに何機の飛行機が離発着できるか)をどのように計算するかということが細かく説明されている。あんまり興味がないところもあったので正直最初の方はしんどい。細かな計算がいっぱい出てきて結構読み飛ばしたが、概念だけ理解した。




 で、これを我慢してある程度理解すると後半の説明に説得力が出てくる。羽田を国際化するための問題点と成田の問題点がわかりやすかった。それから、日米間で昨年12月に航空会社が路線や便数などを自由に設定できる「オープンスカイ(航空自由化)」協定を締結することで合意したというニュースがあったが、オープンスカイに関する解説も載っていたのでタイムリーだった(これを読んでこのメモを書いたのは今年の初めの方なので今はタイムリーでもなんでもないですが・・・)。曰く、アメリカは大きな市場である国内便を解放していないので国際線だけのオープンスカイ協定のメリットはアメリカ側の方に大きいということらしい。オープンスカイは日米間だけではなく、東南アジア諸国ともあるらしく、その際には羽田や成田の発着枠が少ないためにメリット感が小さいものになりがちで、いろいろと工夫をしながら各国と調整ているらしい。航空産業がいかに国策に左右されるのかがよくわかるエピソードだった。

 途中で「アジアゲートウェイ構想」の話が何度も出てきて、これに基づいてこういうのを考えているみたいなことが書かれている。あーそんなことを安倍首相(当時)が言ってたなぁと思いだしたし、それにしてもここでこんな人が出てくるとは思わなかった。この話を読んでて何を思ったかと言うと、結局この構想も官僚が絵を描いていて、政治家はあくまでスポークスマンであり、その事業を継続して実行していくのはやっぱり官僚なのだということ。鳩山までの間には福田、麻生という2代の首相もいたが、宣言された「構想」は今もこうやって生きているのだ。穿った見方をすれば、民主党政権下で見直しを迫られるこの「構想」を本として出して世間にアピールし、少しでも「構想」を浸透させておきたいというよう意識が見て取れた。もちろん必要な「構想」であれば実現へ向けて継続すればよいだけだが、現役官僚による本だけに政治的な意図が透けて見えた気がした。もっといえばこれを出版している日経新聞社の意図も感じた。(誤解なきよう付記しておくがこの構想が悪いと言っているわけではない)
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by vamos_tokyo11 | 2010-04-21 22:10 |


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