『ブラック・スワン』 ナシーム・ニコラス・タレブ

 タイトルも秀逸だが、著者の主張に同意。

4478001251ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質
ナシーム・ニコラス・タレブ 望月 衛
ダイヤモンド社 2009-06-19



 ブラック・スワンとはまずあり得ない事象のこと。「黒い白鳥」と日本語で書くと自己矛盾していてなんだかおかしな感じだが、「ブラック・スワン」だと意味がわかりやすい。本の冒頭に「オーストラリアが発見されるまで、旧世界の人たちは白鳥と言えばすべて白いものだと信じて疑わなかった」とある。何千年にもわたって白鳥は白いものだ観察されてきたが、たった一つの観察結果でそれを覆されてしまった。それが黒い白鳥。黒い白鳥とは予測できないこと、非常に強い衝撃を与えること、そしていったん起こってしまうと、いかにもそれらしい説明がでっち上げられ、実際よりも偶然には見えなくなったり、あらかじめわかっていたように思えたりすること。9・11もグーグルの成功も黒い白鳥だと。

 以上が表紙の袖に書かれている説明と冒頭の文。これがこの本の言いたいことを端的に表している。僕はこれを読んでこの本に非常に強い興味を持った。読んでみて面白かった。ただ著者の癖のある書き方に訳者(『ヤバい経済学』の訳者)が苦労した感があった。また、哲学的な話だったり、否定が連続で出てくる表現があったり、僕の苦手な数学の話も出てくるので読むのに苦労した。でも著者の言っていることにすごく同意できたし、腑に落ちた。著者がディーラーであっただけに、ポートフォリオ理論のことやそういう経済学者を徹底的に叩いているところは気持ちよかった。

 あと、「訳者あとがき」で著者タレブの学界でのポジションや、やり合い(攻め合い)がわかっておもしろい。

 以下メモ。




上巻

 p88 七面鳥の例
 エサを与え続けられて幸せで安全だと思い続け丸々と太り続ける七面鳥はいきなり首を絞められて殺されてしまう。

 p94
 LTCMの連中みたいに、科学で黒い白鳥を起こすことだってできる。黒い白鳥なんてやってこないとまわりに信じさせればいい。科学が普通の人をカモに変えてしまうのはそういうときだ。

 p240
 抽象的なことがわかるようにできていない。文脈がないと私たちにはわからない。ランダム性や不確実性は抽象的だ。私たちは、起こったことには敬意を払い、起こるかもしれなかったことはそっちのけだ。言い換えると、私たちは生まれつき浅はかで中身が薄い。

 p241
 「トンネル化」を避けることを学ばなければならない


下巻

 p66
 小さいことではだまされて、大きいことではだまされない
 将来を左右する大きなことで予測に頼るのは避ける
 政府が2040年の社会保障がどうのとか言ったら放っておく

 p108
 ベルカーブ、この壮大な知的サギ
 大きく外れた値を特異値として無視する。その値こそが全体を決めてしまう黒い白鳥であるのにそれを無視する。

 p218 
 ありえないことが起こる危険にさらされるのは、黒い白鳥に自分を振り回すのを許してしまったときだけだ。自分のすることなら、いつだって自分の思いのままにできる。だから、それを自分の目指すものにするのである。

 p219
 あなた自身が黒い白鳥なのだ
 (きれいな終わり方だ。この世に生まれてくること自体がとてつもない確率で奇跡なのだ、と)


 月並みの国と果ての国

 タレブが好意的に書いている人
 ダニエル・カーネマン、
 フリードリヒ・ハイエク、
 カール・ポパー
 アンリ・ポワンカレ
 ケインズ
 ブノワ・マンデルロブ

 タレブが攻撃している人
 プラトン
 ロバート・マートン
 ショールズ
 ポール・サミュエルソン

下巻
4478008884ブラック・スワン[下]―不確実性とリスクの本質
ナシーム・ニコラス・タレブ 望月 衛
ダイヤモンド社 2009-06-19


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by vamos_tokyo11 | 2010-07-23 23:36 |


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