『沈まぬ太陽』1~5巻 山崎豊子

 すごい本だった。

4101104263沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)
山崎 豊子
新潮社 2001-11



 山崎豊子本は『華麗なる一族』以来2冊目。『白い巨塔』は読み始めてなんとなく自分に合わくて読むのを途中でやめた。『沈まぬ太陽』は圧巻だった。

 読んでまず最初に思ったのが、話自体が30~40年近く前のことを書いていながら、昨年のことのように感じられたということ。日本航空が上場廃止に至った過程で新聞に書かれていた内容が、まるでそのままのように感じられ、会社の体質がなんら変わっていないことにまず衝撃を覚えた。とにかく、まさに今起きていることを書かれているように読めてしまった。それだけ日本航空の経営陣、および日本航空を吸いつくそうとする運輸族議員、そして官僚の闇が深いということだろう。『航空機は誰が飛ばしているのか』にも書いたが、航空業界は行政の方針に大きく左右されるだけに、今後も多かれ少なかれこのような体質は変わらないのだろう。知り合いに日本航空社員がいるだけにいたたまれない。

 本の中でよそから社長が来るシーンがあるのだが、年初に稲盛和夫・京セラ名誉顧問が日本航空CEO就任を受諾したときと重なって感じたのだが、ひょっとしたら何十年も同じことを繰り返している会社なのかもしれない。

 実は文庫第3巻を読み始めるときに気付いたのが、本文の最初に以下のようなト書がある。

 「この作品は、多数の関係者を取材したもので、登場人物、各機関、組織なども事実に基づき、小説的に再構築したものである。但し、御巣鷹山事故に関しては、一部のご遺族と関係者を実名にさせて戴いたことを明記します。」



 



 フィクションですと謳った本は見たことがあるが、事実に基づいていますとはっきりと書いてある本は見たことがない。御巣鷹山の事故はまだしも、出てくる航空会社は国民航空と名付けられているし、その他の関連会社もすべて別名に変わっている(例えば国航開発など)。それだけに敢えて「事実に基づいて」とある。違和感のある書き方だった。

 
 どれが虚構でどれが事実かの推測はここに詳しかった。
 http://www.geocities.jp/showahistory/history07/60c.html

 御巣鷹山事故は自分が中一の夏。忘れられない。当時奈良に住んでいて、父親と同姓同名の人が名簿にあることがテレビのテロップでわかり、親戚中から電話が掛かってきて安否の確認をされた。父は大阪に勤務していたが、東京と大阪の間を飛行機でしょっちゅう出張していた。この事件が起きた日、父に出張の予定はなかったが、事件の後3時間ほど経っても帰宅しておらず、非常に気を揉んだことを思い出す。当時は携帯電話もなかったから連絡をとる手段もなく、結局酒を飲んで上機嫌で帰ってきて母とほっとしたことをよく覚えている。

 それだけよく覚えている事件だけに、今、youtubeで映像を見てぐっと胃を掴まれるような苦しさを覚えた。『沈まぬ太陽』では事故現場や遺族が遺体を特定するときの描写がすさまじく、読み進めるのも息苦しくなり、読む途中で本を閉じることも1度や2度ではなかったため、この動画(当時の解説映像)を見ながら当時感じた胸騒ぎと、本を読んだときの苦しさを思い出した。
 http://www.youtube.com/watch?v=ReowcEJu81I&feature=related
 第一報 http://www.youtube.com/watch?v=M9ogodMtTNs&feature=related
 ドキュメンタリ http://www.youtube.com/watch?v=tvbxP_fU-Mg&feature=related


 本のこと。

 当初アフリカ編の2巻途中まで読み進めたあたりで、主人公恩地元はどうしてここまで頑なに、妻子に苦労を強いてまで己の主張を曲げずにやっていけるのだろうか、と半ば呆れていた。昔の自分なら感動して、大いに触発されたかもしれないが、あまりにも大きな犠牲を払う姿を読むと、今の自分には到底理解できない。自らの力ではどうしようもなく、会社を好転させることもできないにも関わらず、会社と心中しているように見えた。そして、会長室篇(4・5巻)でようやく日の目をみるのだが、ラストシーンでまたも理解の範疇を超えてしまった。

 しかもこの話は事実だというのだから。。。

 事実と小説は異なる。すべてが同じではない。しかし、この会社にしてあの末路という感じだ。


こちらは本を読んだ後にネットで見つけた記事。

 小説と事実の間を埋める話。

 どこかの記者が事実を捻じ曲げてると怒って書かれているが、小説だからねぇ。。。すべてが真実だと思って読む人は少ないだろうし、一般人は誰がモデルかなんてそんなに気にしないと思うんだけどな。
全部読んだあとによむこと。でないとネタばれ満載。長すぎて全部は読んでない。

こちらは主人公のモデルとなった人。

 小倉寛太郎「私の歩んできた道」
 1999年東大駒場祭における講演。
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by vamos_tokyo11 | 2010-07-31 15:00 |


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