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『クラウド化する世界』 ニコラス・G・カー

 もっと広い意味でのクラウドコンピューティング。

4798116211クラウド化する世界
ニコラス・G・カー Nicholas Carr 村上 彩
翔泳社 2008-10-10




 少し前に書店に並んでいて、と思ったが、初版が2008年10月なのでもう2年も前の本だったのか。クラウドという言葉もすっかり一般的になった。この本の中にはアマゾンやセールスフォースドットコムのクラウドの話がもちろん出てくるのだが、それらを中心に語っているのではなく、いわゆるクラウドの話は本文の一部分にすぎない。

 読み終わってそりゃそうだよなと気付いたのが原題を見たから。原題は『The Big Switch: Reweiting the World,from Edison to Google』。こちらの方が本の中身にバッチリあっている。だが、翔泳社が日本用の題名を付けたのは、商業的には好判断じゃなかったろうか。原題にある「Google」をクラウドと読み替えれば本の内容に合致してくるので、大きく異なったタイトルともいえない。

 さて本の内容。その昔、電気が発明されたころ、工場は水車で賄っていたパワーを徐々に電気に変えていく。そしてその電気は各企業が自前で発電していた。その電気を安定的で安価に大量に供給しようとある人物が巨大な発電所を作って商売を始めたところ、徐々に企業が自前で発電することがなくなっていったという話から始まる。現代では、自前でホストコンピュータやサーバでシステムを構築していたものが、徐々にクラウドによってとって代わられているので、電力のそれと同じだ、という。Googleを巨大な発電所という話はよく出るたとえだが、なるほど、こう理解するとよくわかる。

 さらに話は進み、世界中のコンピュータがインターネットで繋がることにより、ワールドワイドコンピュータとして、ひとつの人工知能ともいえるコンピュータの世界になっているということを指摘している。どちらかといえば、ここに関する記述が著者が言いたかったことなのかなぁと感じた。

 そうなっていくことで、人間とコンピュータが繋がっていくというところまで話は進むのだが、最後の方はだんだんSFチックな話が出てくる。だがそれらはもうすぐそこまで来ているような話として書かれている。そういうことが起こるとどうなるかというのは、恐らくカーの最新作である『ネット・バカ』に書かれているのだろう。

 ちょっと古い本なので「セカンドライフ」とかの話が出てきてちょっとおかしかったが、2年でその辺も変わっちゃうんだな、と逆にIT業界の移り変わりの早さに改めて驚いた。カーの主張自体は2年では何ら陳腐化しておらず、予言はより現実的な方へ向かって進んでるなぁというのが読後の感想。翻訳のせいか読みにくい感じのする本だが、ネットやコンピュータのユーザとしてこの辺りに疎い人にはオススメの本。当然、IT業界で働く人にもオススメです。
by vamos_tokyo11 | 2010-11-19 21:01 |


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