『これからの「正義」の話をしよう』 マイケル・サンデル

 話題の書。日曜日の日経で今年の経済本2位になってたけど、これは経済本じゃない。経済よりももっと根幹の話だ。

4152091312これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
マイケル・サンデル Michael J. Sandel 鬼澤 忍
早川書房 2010-05-22



 教育テレビの「白熱教室」は見ていない。録画はしたが溜まっていて全然見ていない(苦笑)。興味はあったので本で読めてよかった。やっぱり本は偉大だ。いまはテレビ録画を持ち歩くこともできるけれども、そのハードがない自分には本は最強のメディアだ。で、この本、読むのに時間が掛かったけれども面白かった。最初はなかなかつらいのだが、第3章のリバタリアニズムの話あたりからぐんぐん面白くなって読むペースがあがった。

 社会・政治における『正義』とはどういうものかというのを、哲人たちの考え方を例に出して解説していく。最終的にはサンデル教授の主張で締められている。国が違えば文化的背景も違うわけで、この本(というかこの人)がこんなに受けてるのは、昨今の行き過ぎた市場主義と無関係ではないのだろう。最終的には日本人からするととても受け入れやすい主張だと思う。
 
 「白熱教室」で検索すると動画もたくさんあるし、すごいまとめサイトもあった。ただ、やっぱり読んだり見たりする時間がないかなぁ。

 読んだことを全部血肉にしようとすると、何度か読みこまないとダメそうだ。本の内容は全然整理できないがメモ。




 p68
 「結局のところ、構成員に慣行や因習を奉じるように強制する社会は、無意味な画一性に落ち込み、社会の改良を促すエネルギーや生命力を失うことになりやすいのだ。」
→ミルの主張はまさにダイバーシティの発想


 p150
 カントの主張は難しい。理屈ではわかるが直感的には分からない。カントは相手のためを思って嘘をつくことを認めない。カントには「嘘も方便」はない。

 サンデル教授の言葉「カントの哲学は難解だ。しかし怖気づく必要はない。挑む価値はある。報酬はけた外れに大きい。」(p138)という言葉にしたがって、いつか読んでみたい。

 p153~ カントの対比
 対比その1(道徳):義務 対 傾向性
 対比その2(自由):自立 対 他律
 対比その3(理性):定言命法 対 仮言命法
 対比その4(観点):英知界 対 感性界

 う~ん、これだけ書いておいて後で見ても、さっぱりわからなくなりそうだな。。。
 1か月以上前に読み終えてたのだけど、まだかろうじて・・・いや、あやうい(笑)


 p231 アメリカンドリームについて
 「成功は徳への見返りであるという信念は、単なる思い違いであり、われわれを呪縛している神話なのかもしれない」

 ロールズの言葉でこれを解説している。アメリカ人は、莫大な富を築いた場合、それは自分のたゆまぬ努力という徳を積み重ねた結果に得られたものだと考えるらしい。つまり金持ちは徳が高い、道徳的功績はすなわち正義である、となる。金持ちは徳が高いのだ。これは日本人の自分からすると、何を言ってるんだ、ロールズの言ってる方が正しいだろう、と思うのだが、ここが文化・社会的背景の違いの発露かと思われる。


 p285 コミュニタリアンの説明
 この中ではアラスデア・マッキンタイアの説明が非常にしっくりくる。リベラリズムの自由よりも何よりも、最も自分にしっくりきた。少し長いが引用しておく。

 「われわれはみな、特定の社会的アイディンティティの担い手として自分の置かれた状況に対処する。私はある人の息子や娘であり、別の人の従兄弟や叔父である。私はこの都市、あるいはあの都市の市民であり、ある同業組合や、業界の一員だ。私はこの部族、あの民族、その国民に属する。したがって、私にとって善いことはそうした役割を生きる人にとっての善であるはずだ。そのようなものとして、私は自分の家族や、自分の都市や、自分の部族や、自分の国家の過去からさまざまな負債、遺産、正当な期待、責務を受け継いでいる。それらは私の人生に与えられたものであり、私の道徳的出発点となる。それが私自身の人生に道徳的特性を与えている部分もある。」


◆おまけ

 これを読み終わってしばらくしたのち、東大で特別講義をしたものを教育テレビで見た(12月上旬)。本で「予習」したせいか、言ってることが非常によく理解できたし、学生の議論も楽しかった。英語で教授と会話する学生や留学生がいたり、みんな立派だったなぁ。こういう講義で生まれて整理されている内容なんかが、米国の土台になっていると考えると、哲学と言うのはやはり大事だなと再認識した。今の日本に足りないsomethingがここにあるから、今年はこの人がうけたのかもしれないな、などと思った。
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by vamos_tokyo11 | 2010-12-28 00:44 |


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