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『ゴールは偶然の産物ではない』 フェラン・ソリアーノ

 2003-2008までFCバルセロナで経営していた人の本。

4902222809ゴールは偶然の産物ではない~FCバルセロナ流世界最強マネジメント~
フェラン・ソリアーノ グリーン裕美
アチーブメントシュッパン 2009-12-01



 昨年12月中に読み終えた本で2010年の読書履歴はこの本まで。読みたい本は溜まってるのだが、2月末までは本を読む暇がないので、しばし読書メモはこれで中断です。

 サッカーファンの間でちょっと話題になった、割りと著名な本。前半は自身の就任前には今ほど人気のなかったバルセロナを、いかにしてブランド力をあげ、収益をあげ、さらには強いチームに仕立てあげていったかという話が主なもの。バルセロナの収益改善を目指すにあたってマンUを見習ったことが書かれていたり、毎年毎年どういうことを注意してクラブ価値を上げていったかということが書かれている。この時期のバルセロナの躍進(ロナウジーニョがやってきて久しぶりにリーガを制覇し、ついにはやっとこさ2度目のチャンピオンズリーグ制覇を成し遂げるまで)を知っている人にとっては、あの頃の思い出をなぞることができるのでなかなか楽しいだろう。

 本自体も経営手法の実際が語られていたりしてなるほどなー、とかふ~んとか読みながらサッカー以外のところに含蓄があったりするのだが、私がこの本で最も面白いと思ったのは後半に登場する交渉のところだ。

 アングロ・サクソンとラテンの交渉の違いについて書かれているところがあり、それぞれにどのように対応するか(したか)ということが書かれていてメチャクチャ面白い。これを読む限りアングロ・サクソン(イングランド・ドイツと記述されている)の交渉は、いわゆる私たちが日常の会社生活でのマナー・慣習に非常に近い。それはビッグ・クラブであってもそうで(ビッグ・クラブほどそうなのかもしれない)、Eメールで詳細条件を何度も交換して合意してしまったり、お互いに敬意を払いつつ交渉を行うというのは、一般企業のそれとなんら変わりがない。

 対してラテンの交渉のエキセントリックさは思わず微笑を浮かべながら読まずにはいられない。トリノではユベントスとのザンブロッタの移籍交渉で、相手の会長がオペラさながらに演技がかり、それについて著者が突っ込む話が出てきたり、「電話では水臭いから」と直接会いに行ったり、会いに行かされたりするイタリアのクラブ幹部の話とか、それから、交渉の最中に突然マスコミ記者相手に電話で交渉の詳細(途中なのに!)を話し始めたりとか、とにかく劇場チックな、まるでショーのような交渉話が語られている。

 そもそもスペイン人だってラテンだろうと思うのだが、この著者はそういうビジネスのやり方を好まないようで、だからこそバルサを名実ともに現在ほどのビッグクラブにできたのだろう。『フェラーリと鉄瓶』の奥山さんの体験談の中にイタリア人と対等に渡り合うために朝から気合を入れて会社に向かうという話があったが、想像がつかない種類のタフさが必要なんだということがわかった。仕事としては一緒にやりたくない感じである(笑)。とはいえそんな機会もないだろうけれども。

 経営に携わっていない自分のような人間にも、ビジョンというものをどう考えるかという点や、いろんな世界があるんだな、という意味で非常に参考になる本だった。
by vamos_tokyo11 | 2011-01-09 20:10 |


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