読みやすかった。
心はどのように遺伝するか (ブルーバックス)
安藤 寿康
講談社 2000-10-20
ダーウィンと”いとこ”のゴールトンの話を枕にして、遺伝子と遺伝の関係や双生児研究の話など非常にわかりやすく面白く書かれている。ピンカーほどアグレッシブではなく、遺伝とは環境も十分に影響するのだというマイルドな主張は、自分にとって非常に受け入れやすいものだった。
この本で知ったことは、心や頭脳は遺伝するが、決してある特定の遺伝子があるわけじゃないということ。複数の遺伝子が組み合わさって、それらが性格などにあらわれているので、そのパターンが遺伝しているということだ。当然アスリート同士の子どもはアスリートの資質を持つ可能性が高いが、組み合わせによってはトンビが鷹を生むことがあるということ。
ちょっと気になった主張がp211のこの部分。
教育とは人間の遺伝的制約を「乗り越えて」環境によって人間の可能性を開花させることではないということだ。遺伝的な条件を背負う人間に対して、その遺伝的条件の発現の場を与えているのが教育なのである。ないから与えてやるのではない。もともと持ち合わせていたものに使う場を与え、それを使用する中で自らの発達しを促しているのが教育なのである。
この話はちょっと怖い。言ってることはこの本の中に書かれている実験からその通りだと思うのだが、教育により、低いレベルを一定のラインに引き上げクリアすべきであり、この考え方を安易に認めると、「言い訳」だらけの教育者と学習者だらけになるような気がする。そもそも個々人にある遺伝的制約をどのように計るのかというところにも疑問が残るが。ただ、自分の仕事上の経験でも、こういったことはママあって、いくら刺激しても反応しなかったりすることも多く、諦めたくなることも多々あるわけで、これを「言い訳」に使いたくなるし、やる気のない子やできない子をみると「しょうがないかな」と思うわけで・・・。難しい問題だな。。