『原発ジプシー』 堀江邦夫

 原発推進派は絶対に読むべし。

4768456596原発ジプシー 増補改訂版 ―被曝下請け労働者の記録
堀江 邦夫
現代書館 2011-05-25



 30年前の本である。この度の原発事故を受けて増補改訂版として5月に出版された。

 この本は、著者が原発で働く人のドキュメンタリーを書こうと思ったが、原発労働者は誰もしゃべってくれないので、自ら中で働いてみようと決意し、その様子を日記形式で記されたルポルタージュ。福井の美浜発電所で約2ヶ月、続いて福島原発(現在の福島第一)で3ヶ月、最後に福井の敦賀発電所で1ヶ月という行程だ。

 今、福島第一原発の労働現場での被爆ニュースを毎日のように目にするが、あのようなことはこれまでも間違いなく起こっていて、しかしながら報道されることもなく、もしくは報道されたとしても自分は興味も示さず見ていなかったということがよく分かった。さらに問題なのは、ちょっとした事故が起こっていても、隠蔽されていたのは間違いない(ということが本を読めばよく分かる)。

 労働環境が過酷なのは放射線が高い放射線管理区域だけではなく、二次系と呼ばれる放射線の影響がない(とされている)区域での労働も含まれていた。満足なマスクもない中でのアスベスト粉塵が舞い散る中での作業(当時アスベストの発がん性は明らかにされていなかっただろうが)は序の口で、息苦しくなるような中で鉄粉の飛び出す熱交換器の清掃作業など、読んでるだけで口の中がジャリジャリして気分が悪くなるような作業がてんこ盛りだ。序盤はこんな感じ。

 中盤から放射線管理区域での作業の話がたくさん出てくるし、そこで働いている人の、ここに来るしか仕方がなかったような人生など、この本でしか分からないような話がたくさん出てくる。そして、もちろん放射線管理の杜撰さ、労働者をそれなりに守ろうとするルールはあるものの、その運用がいかにもいい加減であることが克明に描写されている(運用が杜撰というところが重要)。このあたりは恐らくそう現在も変わっていないだろう。少なくとも3.11以前は変わっていなかったと思われる。

 放射線管理に対する関西電力と東京電力の微妙な差、加圧水型原子炉(美浜)と沸騰水型原子炉(福島)の差によるメンテナンスの違いなど、そういう点もわかる。たとえば、美浜であればタービン建屋でタービンの清掃を行う際は、二次系と呼ばれる放射線がほぼない区域での作業になるが、福島ではタービンの清掃でさえも高度の放射線を浴びてしまい、そのために長時間働けない。そんな労働者の真実の話が載っている。たとえ30年前の話だとしても。原発推進派で、その理由が原発は環境・人に優しいとしている人にはぜひ読んでもらいたい。

 もちろん火力発電所は大気汚染の問題もあるわけだが、原発は運用の段階で犠牲が払われている。大気汚染は無限の広がりをみせるが、原発は汚染区域を局所化できるというのは今回の事故で虚構になってしまった。火力でもない、原子力でもない発電(太陽光・風力その他)が採算が取れる程度にレベルアップするのが一番なのは間違いないと思うのだが。。。

 日々電気の世話になっているものとして、そしてもちろんこの事故のあとだけに色々なことを考えさせられた。
[PR]
by vamos_tokyo11 | 2011-09-12 22:12 |


<< 『村上春樹、河合隼雄に会いにい... 第27節 FC東京×京都 これ... >>