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『約束された場所で』 村上春樹

 オウム真理教信者、元信者に対してインタビューした本。

4167502046約束された場所で―underground 2 (文春文庫)
村上 春樹
文藝春秋 2001-07



 先の本『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』とセットで図書館から借りて読んでみた。undergroundとセットで語られることが多いようだが、私はudnergroundは読んでいない(今度読んでみようと思う)。

 オウム関係者一人ひとりのインタビュー記事を読む前に、まえがきとあとがきをしっかりと読み込んだ。あとがきには、インタビュー前後の河合隼雄氏との対談がある。これが結構、このインタビューを読むときの補助線になってくれる。新興宗教を忌み嫌う自分からすると、この補助線があるかないかは、そういう人たちへの理解を深める上で重要だ。

 また大きいのは、現在があのテロ行為から15年以上経っており、過去のものとして読み込めること。当時の生々しさとは別に、冷静に読んで受け止めることができる。また、自分が年をとったことで、心の弱い人というか清濁を飲み込めずに怪しげな団体へ入っていく人の在りようを、完全ではないまでもなんとなく理解することができる(本を読んだだけで完全に理解した気になるほど若くはない)。だから、村上が「サリンの被害者よりも、オウムの信者の方が、いわゆる”いいひと”が多いように感じた」と言いたくなるのも理解できる。彼らはナイーブなのだ。ナイーブすぎるのだ。きっと幼少の頃からの環境でそのような方向性にいってしまうのだろう。tもちろん生来の性格的なところも合わさって、だが。

 だからといって、サリンのテロが許されるわけじゃないし、なぜそれがオウムで起こったのかは理解ができない。理解できるのはあくまで一般信者で、テロ行為に関わっていなかった人間だけについての話だ。そういう意味でこの本が書いてることはオウムの一面だけの話で、これだけで全体像を語れると思わない。この本をよんでだいぶ当時のことを思い出したし、一般信者の様子も理解できたのだが、果たしていったいあれはなぜ起こったのかというのはこの本だけではわからないし、この本をそれを明らかにしようとするものでもない。なんか事件が起きた理由をきっちり解説してるようなものはないものかな。。
by vamos_tokyo11 | 2011-10-13 23:58 |


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