『日本を滅ぼす原発大災害』 坂昇二・前田栄作

 2007年9月に出た本だ。つまり3・11の原発事故前のもの。Amazonの書評で予言の書のようにコメントしているものがあるが、半分そのとおりで、半分はあたっていない。

4833110768日本を滅ぼす原発大災害―完全シミュレーション
坂 昇二 前田 栄作 小出 裕章
風媒社 2007-09


 この本を読んでよく理解できた問題点は次の3つ。

 ①原発ではこれまでも多数の事故が起きていた
 この事故には臨界事故(意図せずコントロール外となってしまった臨界)を含んでいる。東海村JCOの事故だけではなく、明確な人的事故が起きたもの意外でも多数の重大な事故が起きていたそうだ。

 ②電力会社はこれらの重大な事故を隠そうとしてきたこと
 実際、福島で30年ほど前に事故が起きたが記録が残っておらず隠し通されたものもある。内部告発によって明らかになったために、その隠匿体質が明らかになっている。これは今でもその傾向があるが、つまりはそういう業界だから急に詳らかにしようとしたってできるような組織じゃないのだろう。電力業界はスクラップ&ビルドしないとだめだということがわかる(どこぞの航空会社と同じ)。この本の中では面白い表現がされていて、雪印や不二家が食品偽装で会社が潰れているのだから、トップ交代は当たり前で普通の民間会社なら潰れていてもおかしくない、とある(これまで隠蔽事故があってもトップの引責辞任などはなかった)。全くもってそのとおりだ。
 
 ③使用済核燃料再処理施設の問題
 恥ずかしながら六ヶ所村の使用済核燃料再処理施設について何も知らなかった。




 Wikipediaより
 日本全国の原子力発電所で燃やされた使用済み核燃料を集め、その中から核燃料のウランとプルトニウムを取り出す再処理工場である。最大処理能力はウラン800トン/年、使用済燃料貯蔵容量はウラン3,000トン。2010年の本格稼動を予定して、現在はアクティブ試験という試運転を行っている。試運転の終了は当初2009年2月を予定していた。しかし、相次ぐトラブルのため終了は2010年10月まで延期されることが発表されていたが、2010年9月になってから、さらに完成まで2年延期されることが発表された。完成までの延期はこれまでに18回にも及ぶ。これら延期のため、当初発表されていた建設費用は7600億円だったものが、2011年2月現在で2兆1930億円と約2.8倍以上にも膨らんでいる。


 wikipediaには事故の履歴もあるがすさまじい。とりあえず大規模な核燃料リサイクルの実験場があると理解すればいいだろうが、もんじゅの例を出すまでもなく、ほんまにできるんかいな、というところに非常に多額の予算が使われているということがよくわかる。同じだけの予算(もんじゅやふげんの失敗分を含めて)を他の自然エネルギーの調査や研究にお金を投じていたならばどうなっていただろう、と思わずにいられない。

 問題は無駄なお金の使い方だけでなく、このすさまじい量の核のゴミを今後どうしていくのだろうというところ。どこの地域の人だって受け入れたくないわけだが、六ヶ所村のように、再開発フィーバーで農家から土地が切り売りされたあとの貧しい荒野の扱いが困っていたところへ、多額の補助金を見せられて核施設を持ってきているというのは、まるで悪魔に魂をお金で売っているようで読むだけで苦しい気持ちになる。補助金は麻薬のようなものというのは『津波と原発』の中にあった言葉だが、六ヶ所村の件も同じだ。だからこそ、お金の問題だけで原発を評価しようとする人の考え方には同意できないものがある。

 都会に置けないものをお金の力で田舎に置いている、という構図は非常に心苦しいが現実。でもだったらどうすればいいんでしょう、と言われるとノーアイデア。化石燃料を燃やし続けるのもどうかと思うし・・・。やっぱり原発を減らしていくしかないのではないだろうか・・・。


 さて、この本は原発の恐ろしさを煽っている本なのだが、フェアな視点に立てば、ちょっとトンデモ本的なところもある。つまり恐怖を煽って原発をなんとか止めさせたいというところが透けて見え、原発に懐疑的な人をしらけさせてしまっている面もあると思う。科学的とはいえないような表記が多い。著者が原発を止めることを目的に本書を書いているのであれば、その意味で戦略は失敗していると思う。

 たとえば、『原発事故・・・その時、あなたは!』という本を引用して、能登半島の志賀原発で臨界事故が発生し「破局的な事態に発展していたら」どうなるか、というシミュレーションをしているのだが(p33)、原発から半径7キロ以内で急性死亡率は99%、9キロで90%、11キロで50%、14キロで10%、15キロで5%になる。急性の死者が数万人オーダーだ。風が南西に吹けば、東京でガン患者が64万人になる。緩い基準で考えても富山県と石川県はまったく人が住めなくなる。とある。同様に福島第一原発でもシミュレーションされているが、同じような基準で算出されていて、「被爆の影響によるガン死者数」は東京で最大213万人、総数は334万人に達するとある(p45)。

 「???」が頭にならんだ。まず3・11の事故は間違いなくこのシミュレーションにあるのとどうレベルの「破局的な事態」に間違いないだろう。しかしながら、私はまだ、この原発事故の放射能が原因で急性死亡したという人を聞いたことがない(急性死亡という表現自体あまり聞かないが、要は数日以内に放射能が原因で死亡することと理解した)。もちろん長期的にどのような影響が出るのかはわからないし、わからないので今、安全に倒してなるべく放射線や放射性物質を避けたいと思っているが、少なくとも急性死亡率に関しては完全に誤っていることがわかる。恐怖を煽るだけ煽っているようにしか読めず、読み始めて早々に引いてしまった。残念ながらこの本はこのあとも、全国各地の原発の地図を挿絵にして、その同心円状の自治体の何%の人が急性死する、ということに紙幅を費やしている。とても科学的とは思えない。著者は科学者だと思うのだが、この書き方では信用されなくても仕方がないだろう。まぁ、東海村のJCO臨界事故でも死亡したのは直接20シーベルトと10シーベルト程度を被爆した二人のみだったのだから、この記述は本が出た時点でも怪しいと思われたと思うのだが。。。

 もちろん、今ばらまかれた放射性物質や低線量の影響が今後長い年月を掛けてどのような影響が出てくるのかはわからないし、私自身も不安だ。ただ、こと1ヶ月程度の短期間の話で言えば完全に間違った記述となっている。ただ、福島の例を見ればひとたび事故が起きればとんでもない自体に陥るということは間違いない。
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by vamos_tokyo11 | 2011-11-06 01:44 |


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