『デフレの正体』 藻谷浩介

 今年に入って何冊か本を読んでいるのだが、まとめる時間もなく、メモもあんまり取ってなかったので筆(キーボード?)が進まない。自分にとって、本ってなんなんだろう、って思うところも出てきたりして、整理できてないところでもある。本との付き合い方も変えていかないといけない気がしてたり、つまり自分自身を変えていかなければならない気もしていたり、不惑を前にして大いに惑い、悩んでいる今日この頃。俺は一体何歳まで悩むのかなぁ、死ぬまでこんな調子かなぁ、と思ったり。。。


4047102334デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
藻谷 浩介
角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-06-10



 さて、この本だが、消費の旺盛な世代が減っているのでデフレになっている、ということを述べている。極めて全うな内容だと思うのだが、それがすべてでもないような気もする。例えば90年以降のデフレ進行の理由をすべて国内事情に求めているところに無理がある。もちろん人口動態は重要な原因のひとつなのだろうが、90-00年代に世界の工場としての中国の台頭や、00年代のアジア各国での生産性向上など、『フラット化する世界』の中での日本という視点を抜きにしては語れないだろう。ただ、この本はバブル崩壊やデフレについての「あとだしジャンケン」的な評論で終わっているわけではなく、これからどうすべきかというアイデアが出ているところが良い。

 Amazonの書評でこの本に疑問を呈しているものが高評価を受けていたが、それぞれ自分なりに確認してみよう。

第一に、人口の波がデフレの真因であるとするなら、日本と同じ高齢化問題を抱える国は、日本同様に長期デフレに悩まされているはずです。しかし、ドイツにせよイタリアにせよ、日本のような長期デフレ現象は全く生じていません。

 ドイツやイタリアを日本と同じレベルで問うているところに無理がある。かの国の経済圏はEURO圏そのものであり、EURO全体での人口動態を考えなければならない。資料もないし探す気もないが、ドイツの経済が好調なのはそれで説明がつく部分もあるんじゃないだろうか。また、人口の増加と減少&高齢化が日本ほど急激な国はかつて存在していない(これからは中国がこれに直面する)。それもまたドイツやイタリアと単純に比較するには無理がある点。

著者は、団塊世代が退職するのに伴う労働人口減少に対して、女性の社会進出で対応せよ説きます。(中略)著者の議論の立て方は「オークンの法則」に反しているのではないでしょうか。オークンの法則とは、実質GDP成長率と失業率との間に負の相関関係があるというもの。あっさり言うなら、成長率が下がると失業率が上がるということ(中略)。つまり、デフレ下では失業率が高止まりするのですが、にもかかわらず、人口の波デフレだから労働人口の減少を食い止めよという処方箋は、理解に苦しみます。失業率が高止まりしている状況で、そこへ新規労働者を大量導入すればどうなるかは、言うまでもありません。

 オークンの法則と言うのはよくわからないが、議論の前提条件であるところの認識が違っているのではないだろうか。「失業率が高止まりしている状況で」と述べているが、日本の失業率は決して高くない。90年代後半から5%台を推移するが、先進主要国の中では最も低いし、これほど安定している国はない。(ソース。これが正しいかどうかの検証はしていない)。①ではドイツ・イタリアの人口動態と比べて高齢化を述べているのに、②ではそれらの国とも比較もせずに「失業率が高止まりしている」というのは乱暴な物言い。

第3の問題点は、日本人の持つ莫大な金融資産についてです。日本人の貯蓄好きが行き過ぎ、需要不足=デフレを招いているのは明らかですが、こうした金融資産の多くは高齢者のもので、著者は、高齢者から若者への所得移転を提唱します。これ自体は望ましい政策ですが、所得移転がデフレ解消の効果的な処方箋かどうかには、大きな疑問があります。つまり、所得移転を受けた若者が、将来の不安から貯蓄としてためこんでしまえば、結局は同じことになってしまうからです。この問題は、なぜ不況にもかかわらず日本人は貯蓄ばかりするのかという視点が重要になりますが、著者の議論は、高齢者にはもう欲しいものが無いから若者に金を回せというところで停止してしまっているのです。

 停止してるのはこの方の指摘だろう。高齢者より若者世代の方が消費する、と考えるのは普通の考えじゃないだろうか。余暇の時間は高齢者の方が多いが、日用品の消費、子育てに関連する消費、新しい商品分野を開拓していくのは高齢者ではなく現役世代だ。インターネットやスマホを70歳くらいの人たちが使い出して爆発に普及していくなんてことは想像しにくい。将来への不安は若者も老人も持っていて、それが貯蓄に回るのはわかるが、それでも現役世代のほうがお金を消費に回すのは間違いない。だって家を買うのもクルマも買うのも現役世代の方が圧倒的に多いし。

 ということで、Amazonの書評で「780 人中、620人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています」なんて書いてあって、こういうボタンもあてにならんもんだな、と思った次第。「自分の頭で考えよう」ってこと。

 著者は今後の政策の提言をしているのだが、問題はそれら(別の方策でもいいんだけど)を誰が精査して、実行に移していくのかというところ。最近こういう提言みたいな本を読んでも、アイデアは実行に移さないと「絵に描いた餅」だよ、と思って、どうにもモヤモヤしてしまうのである。俺にできることってなんなんだろう。評論家きどりで本を読んでても意味が無いし、選挙に出て実行するわけでもないし、結局自分の身は自分で守るしかないんだけど、そこだけで終わっていいのかよ、みたいな。こうやってグダグダ言ってるしかないのか。。。
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by vamos_tokyo11 | 2012-04-08 02:32 |


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