『争うは本意ならねど』 木村元彦

 じわっとくる感動と怒り。

4797672013争うは本意ならねど ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール
木村 元彦
集英社インターナショナル 2011-12-15




 記憶に新しい我那覇のドーピング冤罪をめぐる話。やっぱり木村元彦氏の本は面白いなぁ。

 じわっとくる、と書いたがまず来るのは腹立たしい怒りと情けなさだ。FC東京というクラブを通じて何年にも渡ってJリーグを楽しんでいる身としては、とにかく怒りが湧いてくるJリーグの対応。この事件は単なる”誤審”だと思っていたが、実はJリーグが引き起こした人災であり、ひとりの選手をスポイルした「犯罪」といってよい。

 加害者はJリーグそのもので、その責任者がここに登場する鬼武チェアマン、川淵会長、そして直接の当事者である青木DC委員長。木村元彦氏の書き物にはちょくちょく悪者として登場する川淵氏も同じトーンで登場(笑)。本件で取材を申し込んだが、またしても断られており、「お約束」芸のようで、ここについては笑ってしまった。

 そして何よりも腹立たしいのが川崎フロンターレというクラブ。川崎はファンが温かく、選手・フロント・ファンが近い理想的なクラブと言うイメージがあったが、ここに出てくるクラブトップ(武田社長)は最低の一言しかない。変わりに早川社長(清水)、安達社長(神戸)といったJ社長の面々が名を上げている。一方で浦和の仁賀ドクターなど感動的なチームドクターたちも登場する。ちなみに我がFC東京は社長もドクターも一切名前が出てこない。

 なるべく客観的に読んでいたのだが、あまりに善と悪が強烈に対比されて書かれており、どう読んでもJリーグのひどさはぬぐえない。後半はますます怒りが増してくる。しかしそんななか、電車の中で思わず涙しそうになったくだりが、裁判費用のちんすこう募金に奔走した我那覇の地元の先輩であり、それに応える川崎サポ、他チームサポの活動の話だ。

 独裁者の様に権力を握るJFA上層部とそれに抵抗・対抗する医師・選手とそれを支える無数のファン。我那覇はクラブやリーグとの対立を避けたかがっていたということだが、木村元彦氏は対立を際立たせる書き方で「黒」と「白」のコントラストを強めている。そりゃ取材を断った青木医師の判断は正解だろう。

 それにしても川崎が支払った1,000万円の制裁金は返さないは、我那覇側の弁護士費用が3~4,000万と言われるがそこに補填もしない。CASの判決で完全にJが敗れたにも関わらずこの有様。Jリーグの選手に対する扱いはひどいの一言だ。この傾向は今も変わっていないということを我々は忘れてはならない。いつなんどき我々の選手がこのような目にあうかもしれない、ということは意識のどこかにおいておく必要がある。

 そして何より選手期間のピーク時期1・2年をこのような形で過ごさなければならなかった我那覇が気の毒でならない。オシム爺に代表を呼ばれ、まさにキャリアハイの時期の出来事。この事実をしても、やはりJリーグ側の行った対応は許しがたいものがある。
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by vamos_tokyo11 | 2012-05-05 23:57 |


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