怒りの書。
官僚の責任 (PHP新書)
古賀 茂明
PHP研究所 2011-07-16
『日本中枢の崩壊』の著者が官僚を辞職させられる直前に書いた本だ。一気に読める。この本を読むと日本が「終わってるなぁ」と思わずにいられない。そして猛烈な無力感を感じる。なんといってもあの3.11でも政治が変わらない国なのだ。どうしようもないと、やはり思わずにいられない。
この本を読めば霞ヶ関が人材の墓場であり、官僚が国のためではなく省庁のために働くようになっていく道理もよくわかる。それには人事制度をドラスティックに変えればよいことをもよくわかる。そして、それがどれほど大変なことなのか、難しいことなのかもよく分かる。それを変えられるのは政治家だけなのだが、そういった政治家を選ぶことができるのは国民であり、我々はそこを理解した国民になる必要がある。「
国民よ立て!悲しみを怒りに変えて、立てよ!国民よ!」なのだ。
本の中で至極共感したのが「あまりにも従順過ぎるのではないか。もう少し文句を言ったほうがいいのではないか?」と震災後に避難生活を強いられている人に対しての感想だ。ただ、誰に文句を言えばいいのか、どうやったら政治家や世の中を動かすような文句が言えるのか。果たして文句を言ってた人はいたと思う。でもきっとリーダーシップを持って避難所全体を統一するような人がいなかったんではないだろうか。前にNHKスペシャルで仮設商店街を実現した素晴らしい人の特集があったが、そのレベルの人がたまたまいたところと、いなかったところの差はとてつもなく大きかったと思う。文句を言うのにも頭脳が必要なのだ。大衆は馬鹿ではないが、リーダーを担える人はやはり特別な能力を持っている人だと思う。
震災後に変わらない政治と官僚に苛立ちを感じながらも、まだ選挙が行われていないことにかすかな希望を感じたりする。地方選でも大阪市長選、府知事選の結果はひとつの変化だと思う。まぁ大阪は府知事が橋本氏で前からの流れを引き継いでいたが、流れは変わっている。ただ、既存政党以外に託そうとすると、ミニ政党の寄せ集めになって上手くいくはずもなく、このあたりが悩ましい。著者は官僚をやめて、今、何をやっているか知らないが(あとで調べたら大阪で府か市のご意見番みたいなことをしてるみたいだ)、きっと次の国政選挙で立候補してくるだろう。そしたらその動向に注目したいと思う。この本で述べていることを実行してくれるのであれば応援したいと思う。