『サッカーと独裁者』 スティーヴ・ブルームフィールド

 原題はAFRICA UNITED。

4560081875サッカーと独裁者 ─ アフリカ13か国の「紛争地帯」を行く
スティーヴ ブルームフィールド 実川 元子
白水社 2011-12-10


 アフリカ駐在となったイギリス人(熱烈なアストン・ヴィラ ファン)がアフリカ各国を訪れ、サッカーを通して現地の状況を描いている本。

 サッカーファンとしては、邦題よりも原題の方がしっくりくる。この本に出てくるアフリカの13カ国はそれぞれに問題を抱えていて、それでもこちらから見るとアフリカとしてひとつにくくってしまうところがある。まるでUNITEDなわけだ。サッカーファンがUNITEDという単語を見て真っ先に連想するのはサッカークラブなわけで、サッカーファンからするとこの原題はニヤっとしてしまうわけで、原題の方が圧倒的にセンスがいいよなぁ。サッカー本として明らかにわかるようにするためにこの邦題にしたんだろうけど、ちょっと残念(白水社なんだからそれだけでサッカー本だってわかりそうなもんだけど)。

 肝心の中身のほうだが、読むのに難儀した。翻訳本は読みにくくて昔からあんまり好きじゃないんだけど、これはほんとに読みづらかった。どの国の話も興味深いのだが、なんか読みにくい。訳者はわりと見かける人なんだけど、とにかく読みにくかった。でも途中で読むのを止めなかったのは興味深かったから。それぞれの国について、サッカー(代表チーム)を利用する権力者、その国の政治的背景や近年の歴史、そして地元クラブの試合だったり代表の試合を通じてのファン目線での記述・ファンとの触れ合い、などが書かれている。

 スタジアムを訪れて実際に感じたことや、チームのオーナーや国・クラブの権力者などを取材した内容を軸に書いている。街の様子やスタジアムの様子はその辺のブログと変わらないような気もするが、やはりインタビューやファンにくっついて取材した内容が書かれているところはジャーナリストならではという感じがした。またそれらを軸にその国々が抱える政治的問題の背景などがフォローされており、アフリカに興味のある人には非常に読み応えがあると思う。『アフリカ・レポート』が面白い・興味深いと思った人にはオススメできる。


 こんな章立てと国々。

 まえがき   チーター世代が台頭するアフリカをサッカーで読み解く
 第一章 エジプト    サッカーを利用した独裁者
 第二章 スーダンとチャド   石油をめぐる哀しい争い
 第三章 ソマリア   紛争国家に見出される一筋の希望の光
 第四章 ケニア   サッカーは部族間闘争を超える
 第五章 ルワンダとコンゴ民主共和国   大虐殺と大災害を乗り越えての再生
 第六章 ナイジェリア   サッカー強豪国が抱える深い悩み
 第七章 コートジヴォワール   サッカー代表チームがもたらした平和と統一
 第八章 シエラレオネとリベリア   アフリカナンバー1になった障がい者サッカー代表チーム
 第九章 ジンバブエ   破綻した国家でサッカーを操る独裁者
 第十章 南アフリカ   アフリカ初ワールドカップ開催国の光と影
 エピローグ


 この本で良いのは、やっぱり現場(スタジアム)で直にファンと一緒に試合を観戦して(非常に危険なこともたくさん出てくる。なんといってもソマリアにまで行っている)、そのファンとは友達として同じ目線で語っているところだろう。そして著者がアストン・ヴィラ ファンであり、ヴィラに対する熱い思いが突如現れてくるところになんとも親近感を覚えてしまうのだ。

 第7章のコートジヴォワールでは、国を統一したサッカーの力、ドログバの影響力が紹介されるのだが、肝心のドログバへのインタビューがなかったりでなんとももったいない終わり方になっている。でも文学的だったりで、ちょっとやられた感のあるエンディングだった。
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by vamos_tokyo11 | 2012-07-22 01:29 |


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