『あんぽん』 佐野眞一

 エキセントリックな孫正義伝。

4093882312あんぽん 孫正義伝
佐野 眞一
小学館 2012-01-10



 単純におもろい。ソフトバンクの孫正義氏について祖父母の代までさかのぼって取材して書かれているノンフィクション。この書いてるおっさんはほんとに面白い人だな。なんか誰でも書けそうで絶対書けないようなレベルの本を次々書いてるのがすごいよ。去年『津波と原発』を読んだけれども、その時期に並行してこれの後半を書いてというのだからすごい。

 孫氏は在日朝鮮人の3世として生まれて日本国籍を取得。珍しい名前だなと思ってたら祖父母の代に日本へやってきたとのこと。佐賀の駅前のバラックに育ち(あのスタジアムがある辺りなのだろう)、その後父の事業の成功とともに引越し、高校時代に中退してアメリカへ留学する。孫氏の小学生・中学生時代の話も面白く、やっぱり普通じゃなかったんだなというのがよくわかる。高校の時分からビジネスのことを考えてたりして、『ザッポス伝説』のトニー・シェイと同じなのだ。やっぱりこういう人たちは子どものころからそういった方面の何かを持っているようだ。アメリカに渡って大学で学びながら事業を起こして翻訳機で成功するところまでの話も興味深い。

 孫氏自身の話はもちろん面白い。でもこの本の主役は父の孫三憲氏だ。間違いない。はじめにエキセントリックと書いたが、この人のことだ(笑)。またエキセントリックなのはこの三憲氏だけではなく、伯父や祖母などたくさん出てくる。めちゃくちゃ面白い。と同時に、戦後の厳しい時代を生き抜いてきたたくましさだったり、孫氏の父親も相当な実業家だったんだということがわかる。さらには祖父母(三憲氏の父母)が朝鮮半島から日本にやってくる経緯だったり、炭鉱で働く過酷さや、炭鉱事故でなくなった伯父の話だったりと、ものすごいドラマがそこここに散りばめられていて、読んでいて飽きない。その中心には三憲氏がいる。

 いやー面白かった。漫画みたいだった。これがノンフィクションだというんだから、すごい一家だな。
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by vamos_tokyo11 | 2012-09-09 23:53 |


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