『下町ロケット』 池井戸潤

 今年読んだ本の中で1・2を争う面白さ。(最後の方に若干ネタバレありのためご注意)

4093862923下町ロケット
池井戸 潤
小学館 2010-11-24



 すごい。ものすごく良かった。外(電車の中と喫茶店)で読んでるときに合計3回くらい泣きそうになってやばかった(笑)。ベタな感じもするんだけど、こういうのがエンターテインメントだよ。極上のエンターテインメント。

 池井戸潤の本は初めて読んだんだけど、この本は文庫が出たら、と思ってたところ会社で貸してもらって読んだもの。それなりに期待して読んだのだけど、期待以上だった。最初の方は訴訟がらみの話で始まって、中小企業が大企業に勝ってスカッとするような内容なのかな、と軽く考えてたら甘かった。その後の流れがすごい。最後の方なんか紙幅が減ってきてるのに、これで一体どこまで話が進むのかというくらいどんどん加速していって読むのが止まらなかった。

 主題はロケットだのバルブだの難しい科学の話なのではない。心に刺さるのは登場人物たちの気持ちがいちいち痛いほどこちらに刺さってくるからだ。社長の佃の気持ち、経理の殿村の気持ち、特許権の貸し出しと製品納入に揺れる気持ち、若手の気持ち、帝国重工のマネジメントの気持ち、悪者として出てくる調査担当者の気持ち。どれも自らの立場でそれぞれに発言して行動しているのだが、仕事に対する真摯な思いとか、誇りとか、そういう働く人間に備わっている当たり前のものがサラリーマンの自分にビンビン伝わってくる。ひとつひとつの「できごと」に自分の現在の環境や思いを重ねたりして(これがまたどっからでも重なってくる)読み進めてしまう。誰が正しくて間違ってるなんてことはないんだけど、それもいちいち重なってくる。ひとつだけ登場人物に共通しているのは、それぞれの登場人物が持つ自らの仕事に対する誇りで、それが読み手の心に刺さるのだろう。


 感動ポイントはいろいろあったんだけど、自分なりに選ぶとこれだ。(以下チョイネタバレあり注意)


・帝国重工のテストに不安を見せる佃を励ます母親の言葉。「腰を据えてぶつかってこい」
 ちょいちょいいい味出すお母さん。元妻もかなりポイントで、大事なところで物語を動かす。

・真野(若手社員)と佃のやりとり
 「仕事ってのいうのは、二階建ての家みたいなもんだと思う。一階部分は、飯を食うためだ。必要な金を稼ぎ、生活していくために働く。だけど、それだけじゃあ窮屈だ。だから、仕事には夢がなきゃならないと思う。それが二階部分だ。夢だけ追っかけても飯は食っていけないし、飯だけ食えても夢がなきゃつまらない。(攻略)」

 うまいこという。その通りだよな、自分にとっての二階部分ってなんだろう、みんなにとっての二階部分ってなんだろう、って考えた。この表現使いたい(笑)。


泣きそうになった3箇所
・「佃品質、佃プライド」のポスターとテスト対策のシーンから第一段階完了後の殿村の乾杯まで
・バルブ採用決定から2回目の実験結果を電話で受けるシーン
・打ち上げシーン

こうやって見ると感動シーンには殿村がいつも絡んでくる。話の最初と後半でキャラに変化が出てくるところといい、うまいこと書くよなぁ。
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by vamos_tokyo11 | 2012-11-26 23:24 |


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