『ハックルベリィ・フィンの冒険』 マーク・トウェイン

4102106022ハックルベリイ・フィンの冒険 (新潮文庫)
マーク・トウェイン Mark Twain
新潮社 1959-03



 オススメの何冊、みたいなところに必ず誰かが入れていて、いつか読まなければ、と思っていた。やっぱり長いこと時間という荒波に揉まれても生き続ける本は違う。時代背景も国も、とにかくいろいろなことが違うのだけれども、なんか人間の普遍的なものが伝わってくるような、そういう小説だった。

 子どものころ、トム・ソーヤーの冒険はアニメで見た記憶があり、ハックルベリィ・フィンはそこに出てくる太目の友達という印象しかなかった。その印象すら曖昧なのだが、この本は、『トム・ソーヤーの冒険』のあとに書かれたものだということだ。物語の後半にはトム・ソーヤーも出てきて、ウルトラセブンがを見てたら、ウルトラマンが登場したときのような、妙なワクワク感があった(ちょっとたとえが変だけどわかるかな)。

 この時代、まだ奴隷制度があり、ハックは、売り飛ばされるところを逃げ出した黒人奴隷のジムと隠れながら旅を進める。旅というかまさに冒険。ハックは実の父親から逃げるために、まるで殺されたかのような状態を家に作り、そしてそれに成功する。もう最初っから描写がすごい。リアリティがむちゃくちゃあるのだ。その後も川をいかだやボートで下ったり、川の中州にある島でサバイバルしたりする様子が描写されるのだが、薄暗いその状況を横から見ているかのような気にさせてくれる。

 奴隷制度のある当時に書かれていることもあり、現代からは想像もつかないような黒人への扱いや、黒人側の奴隷としての振る舞いなど、最初はショッキングな表現が多い。現代人の常識から考えてはならないのだが、このような状況が100年ちょっと前に彼の国に存在していたというのは、非常に奇妙な感じがしてくるのだ。さらにいえば、この名残というか、黒人への差別は南部でもまだ根強く残っているとされていて、その源流を見る思いがする。

 ただ、ハックはジムに対して友情を感じているし、奴隷を逃がすという当時の大罪を犯すことに恐怖するが、それを乗り越えようとするところなど、ひょっとすると著者は奴隷制度に反対だったのではなかろうかと思わせるものがあった。間違ってはいけないと思うのは、現代の文脈で当時の空気や行間を読むのはミスリードの元であるので慎むべき、とは思うものの、私が当時の文脈でこの本を読むことも不可能であり、つまりは自分の素の部分で本に向き合うよりほかにないのだろう。

 ところどころそういった社会的なところを考えさせられるが、ハックのジムやトムとの友情やハックの賢さ(これほど賢い孤児がいるのだろうかと思うし、著者を投影しているのかなとも思ったが)に感嘆し、楽しめる不思議なお話だった。
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by vamos_tokyo11 | 2012-11-27 23:36 |


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