『大地の子』の周辺本

 『大地の子』があまりにも衝撃だったため、その裏側というか周辺を知りたくて、いろいろな本を手に取った。著者がどのような思いで書いていたのか、取材はどうだったのか、それらを読むといろいろなことが分かってとてもよかった。


『文藝春秋 創刊90周年記念号 2013年1月』(2012年12月)
B00A8KKKWK文藝春秋 2013年 01月号 [雑誌]
文藝春秋 2012-12-10



 雑誌というべきなのか、この本を初めて手に取った。読みにくいのね、これ。数ページずつ色んなお話があるのだが、文字だらけで、パッと見、どこからタイトルが始まってるのかわかりにくいし、そもそも目次らしきものが発見できなかった。

 この本には山崎豊子氏が90周年特別寄稿ということで『「大地の子」と「運命の人」』というタイトルで8ページを書いている。『大地の子』を書くにあたり、中国の取材がいかに大変だったものかということが書かれており、そのなかで胡耀邦総書記との3度の会見を通じて、取材の道が開かれたことが書かれている。


『大地の子と私』(1996年)
4163515801『大地の子』と私
山崎 豊子
文藝春秋 1996-05


 上の文藝春秋で書いている内容をより詳しく書いているのがこちらの本。執筆中に胡耀邦総書記が亡くなり、葬儀に駆けつけるも列席できず、自宅を訪ね総書記の奥様と語り合う話。さらには本が完成した後、単行本を墓前にささげに行く話が、それだけで物語になるようなドラマティックさで描かれている。現代中国においてこのようなタイプの指導者がまた現れる日がくるのだろうか、というくらいここ10数年の指導者たちと印象が異なる。まさにこの人がいたからこそ物語が完成できたといえるようだ。

 この本では取材のときの貴重な写真があったり、本のストーリーを構成するための重要な証言として残留孤児へのインタビューが一部収録されている。関東軍が逃げた後、一般市民がソ連軍から逃げる話や、逃げる途中に赤ん坊の声でばれないようにわが子を絞め殺す話などが特に印象的だ。自分が子どものころに残留孤児のニュースをよく見た記憶があるが、まさかこのようなことがあったとは知らなかった。戦争がなぜ悪であるかが分かる。


『作家の使命 私の戦後』
4103228202作家の使命 私の戦後 山崎豊子 自作を語る (山崎豊子自作を語る 1)
山崎 豊子
新潮社 2009-10-31


 こちらについては『不毛地帯』『二つの祖国』『大地の子』『沈まぬ太陽』『運命の人』の5作について語っている(『運命の人は』未読)。『大地の子』だけでなく、4作を読んでいるので非常に興味深かかった。『不毛地帯』のモデルは有名だが、キャリアは参考にしても中身はやはり違ったものであることがハッキリとわかったし、それは『二つの祖国』や『沈まぬ太陽』にしても同じであることがよくわかる。(ただし『沈まぬ太陽』についてはほぼ事実に基づいているらしく、かなり異例な構成だろう)。

 この5作品への著者自身の話を読むと、それぞれどれもが常に新しい手法への挑戦であり、そこに向かって正面からぶつかっていっていることがわかる。その中でも『大地の子』に対する著者の思いは格別で、読者としてもそれが伝わってくる。作品を読んだだけでもスケールの大きさがあるし、時代を背景としてあの中国の内部に通じるような話をあそこまで書けるというのは今でも難しいのではないだろうか。

 著者は『大地の子』の印税を使って、帰国後の戦争孤児の2世3世のための奨学金基金を設立している。それが戦中派である自身の役割であると考えている。義務感のようなものに読み取れた。

 最後に『経団連 松の廊下』というコラムがあるのだが、宝山製鉄所を建設中に、新日鉄の社長に取材したときの著者に対する粗末な扱いが書かれている。それに憤慨したあとの模様には、ペンは強いと思わせるエピソードであるし、企業トップの表・裏の態度が痛烈に書かれていて面白い。


 その他、2冊の本を読んだが、それについては別エントリで。
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by vamos_tokyo11 | 2013-09-28 02:00 |


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