『海賊とよばれた男』 百田尚樹

 爽快。噂どおりに面白かった。

4062175649海賊とよばれた男 上
百田 尚樹
講談社 2012-07-12



 出光佐三と出光興産をモデルとした小説。1885年生まれ、1981年没という95年の波乱万丈でありながら信念を貫き通した生涯を描いている。この本はとにかくリズムが良い。上下巻700ページを超えるのに、短く感じるくらいに読みやすい。これは、展開をどんどん進めて、途中の細かな説明を省けるところを思い切って省きまくっているからだろう。え、もう次に行っちゃうの?と思うくらい次々にエピソードが進んでいくので全く中だるみしない。少し軽い感じもするのだが、万人に受けて、これだけ売れるのはこういうところが受けていることも理由になっているに違いない(まさに売れることを目的に書かれているのだろうが)。

 ここに作者のインタビューがあり、そこにも書かれているのだが、戦後すぐの時代に出光佐三だけが凄かったわけではなく、多くの志高い人たちがいたからこそ、このようなおとぎ話的な事実が起こり得たのだと思う。東京銀行、東京海上火災保険、通商産業省、そういう人たちのおかげで「日章丸事件」という快挙があったのは間違いない。僕が電車の中で思わず涙しそうになったのはイランで日章丸がイランの人たちに歓喜で迎えられるシーンだった。熱い、おとぎ話のような世界があの時代には本当にあったのだ。
インタビュー2つめ

 馘首なし、タイムカードなし、出勤簿なし、定年なし、というのもこのお話(というか出光)の「売り」のひとつ。「ということは残業代もなしってことか」と思っていたのだが、このインタビューではそこにも触れてある。また、なぜ尊敬する経営者が松下、本田、稲盛、といった面々だけで、出光佐三が挙がってこないのか、ということについても分析していて面白かった(そこに誰も発見していなかったネタがあったということ)。

 ところで、出光興産がその後どうなって今に至っているのか、ということに興味を持ったので、いろいろなサイトを見た。すると、出光昭介氏(出光佐三氏の長男でこの本の中にも登場する)のWikipediaに以下のPDFリンクがあり、会社がどのように変わっていったのかが書かれていた。2006年に上場し、残業制度や定年制度もあるということで、だいぶ会社も変わってきているようだ。クビ(いわゆるリストラによるクビ)は無いようで、「大家族主義」という理念は生きているようであった。(この本にまとまっている模様)

 僕は「昔は良かったなぁ」というのは好きではない。今は今で素晴らしいことがたくさんあると思う。だから単純にこういう人が今いれば、なんてことは全く思わない。やはりその時代の著名人は少なからず時代を映す鏡であると思うわけで、あの時代だからこその表現があったのだと思う。だから、ものすごく右右しい形で政府というか安部晋三の靖国よりの世界をサポートする著者の政治的な側面は好きではない。とはいえ、お話はお話として面白かったというは事実。それとこれとをしっかり分けて考える、理解することが大事だと思う。
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by vamos_tokyo11 | 2014-01-19 01:11 |


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