『終わらざる夏』 浅田次郎

 小説を読むときは必ず事前に情報を得ないようにしている。たとえばこの本で言えば、本屋のpopで戦争に関するものだというのが分かると、それ以上はなるべく避ける。ネットで事前にあれこれ見るということはありえないし、友達から「どうか」という話を聴くこともしない。自分のそのときの興味にしたがって、今回であれば、戦争関連であること、本屋のpopが自分の今の興味にピッタリであったこと、浅田次郎なら間違いないだろうと思ったこと、それらからこの本を読むことにした。だからここにもあまり本の内容には触れないようにしておきたい。

4087450783終わらざる夏 上 (集英社文庫 あ 36-18)
浅田 次郎
集英社 2013-06-26




 物凄い重さで、最後の方は読むのがつらい。

 途中までは、戦争の中にも何か光るものというか、それぞれの希望というか、楽観的な何かを感じさせるような描写を、それぞれがたくましく生きていくドラマの中に感じていたのだが、終盤はそれを切り離していくような流れに入っていき辛かった。

 でも、これは史実として知らなかったことを教えてくれる貴重な物語である。そして、それは日本人として知っておかなければならないことだと思う。また、今のような周辺国と微妙な状況になってきている中で、戦争とは何かを国家・軍隊の目線から自分の生活レベルの目線にまで下げてくれる、貴重な物語である。

 とにかく登場人物が多い。そして、その誰もが主人公になるレベルの詳細さで描かれている。そして実際、ひとりひとりは主人公として苦悩し、彼らの物語を貫いていく。

 文庫本あとがきの梯久美子氏の解説が本の価値を存分に表しているし、集英社のサイト(これは永久に残しておいて欲しい)を見れば、著者の執筆に対する思いが読み取れる。

 ただ、この本に出てくる軽井沢で譲と静代がサーシャと遊ぶシーンは不要だった。細かく物語を実話の様に積み上げてきたものをファンタジーを混ぜることでちょっと興ざめしてしまった。最後もまた似たようなことが出てくるが、それはまだなんとかかんとか飲み込めたけど。


 蛇足で一点。著者は政治的な問題を提起しようとしているのではないと言っているが、北方領土だけが日本の領土ではなく、千島列島も日本が平和的に得た領土である、というのは歴史的な事実である。小説にも書かれているが、あえて言えば、千島列島はもともと日本の領土でもロシアの領土でもなく、クリルアイヌのものである。「北方四頭だけ返してもらおうのはなんだか不思議だな。どうして千島列島全部じゃないのだろうか」と、子どものころから思っていたのだが、こういう主張をする人に初めて出会った。

集英社
http://www.shueisha.co.jp/1945-8-18/index2.html
占守島特設サイト
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「士魂」の由来
http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/11d/organization/sensha.html
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by vamos_tokyo11 | 2014-01-19 01:30 |


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