『日本兵を殺した父』 デール・マハリッジ


4562049251日本兵を殺した父: ピュリツァー賞作家が見た沖縄戦と元兵士たち
デール マハリッジ Dale Maharidge
原書房 2013-06-24




 今年は戦争関連の本ばかり読んでいる。今回のは小説ではない。沖縄戦に従軍した父を持つ息子(=ピュリッツアー賞ジャーナリスト)が、父の死をきっかけに当時の軍の同僚たちにその戦争がどんなものであったかを教えてもらうという内容だ。PTSDの症状が出て、家でも突如として暴力的になる父を持つという家庭で苦しみながら育った著者が、父が語ってくれた戦争の情報を基に、どのような戦場で、死んでいった父の同僚マリガンがどのような亡くなったのかを明らかにしていく。最後には沖縄を訪れ、当時の沖縄を知る人たちとの出会いもある。

 これまで読んできた戦争関連の本は、小説や、実際の経験者であっても軍人ではなく被害者としての一市民からの話であった。この本は兵隊であった人々の声を載せていて、さらにはそれが米軍側の人々の話である。直接戦場で銃弾を潜り抜けて来た人たちの話は重い。祖父に従軍したときのことを聞けなかった自分としては、学ぶことが多い本だった。

 戦後68年経ち、当時従軍していた人たちに語ってもらうためには、もう本当にギリギリである。既に遅い部分もある。この本の凄い点はいろいろあるのだが、2010年、2011年にインタビューした人たちのうち、既に他界してしまった人が複数いることだ。まさに著者が父の戦場を理解するためには、ギリギリのタイミングであったことがうかがえる。インタビューは著者の父が所属していたL中隊(ラブ中隊)の同僚たちに行われている。

 この本では戦争にならざるを得なかったマクロ的な視点が語られているわけではない。現場で起こっていたこと、戦争の悲惨さ(と書いてしまうと安っぽくなる)が、それを経験した人たちから語られている。そして12名の元海兵隊員からの話で戦場とはどういうところかということが伝わってくる。

 第一部で著者の父がどのように戦後を過ごし、著者自身がどのような家庭で育ってきたかが語られる。戦争が何十年も暗い影を落とすことがよく分かる。第二部ではL中隊が戦ったグアムと沖縄の位置づけについて説明がある。第三部では12名の元兵士たちにインタビューが行われている。それぞれの戦争への思い、日本人への思いが語られており、興味深い。未だに日本人を見ると気分が悪くなる人もいれば、日本人・日本に対してなんのわだかまりもなく、彼らも被害者だったと言える人もいる。クルマもずっとスバルだという人もいる。第四部では沖縄を訪れ、日本で拾った父の遺品を持ち主の家族に返したり、マリガンが亡くなった激戦地、シュガーヒルを訪れたりしている。そして現地で戦争の記憶を持つ人々と色々なゆかりの地を訪れる。少年兵として従軍させられ戦場で親友をなくした山田義邦さんの話は壮絶だ。最後にマリガンが亡くなった地で沖縄式の墓参りをする際の、山口順一さんとの邂逅は美しい。この本の終わり方としてもっともふさわしく、著者がこの調査を終わりにするには最高の出会いだったと思われる。

NHKスペシャル(放送された記憶はあったが見ていなかった)
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2011/0619/

動画:あってよかった!
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by vamos_tokyo11 | 2014-01-19 01:36 |


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