『キャパの十字架』 沢木耕太郎

 事実を、しかも70年も前の写真の真実を突き詰めていくドキュメンタリー。まさに「事実は小説より奇なり」。凄い本だった。

4163760709キャパの十字架
沢木 耕太郎
文藝春秋 2013-02-17



 1937年に撮られたキャパの「崩れ落ちる兵士」というタイトルをつけられた写真。フォト・ジャーナリズムの世界では最も有名といえるもの。これが果たし本当に銃弾に倒れたものなのか、さらには本当にキャパによる撮影によるものなのか、それを写真に対する分析と事実の積み重ねで証明していく。

 しかもただ事実を積み重ねて分析するだけではないのがさすが沢木耕太郎。まるでドキュメンタリー番組を見ているかのような面白さで話は進む。真実を発見するまでの過程、沢木氏のキャパに対する思い、キャパの本を翻訳するころからの関わりなどを交えながら話が進んでいく。スペインのバスク地方でススペラギ教授に聞く撮影場所と思われたコルドバの丘、コルドバを数度訪ね現地での調査、フランスで図書館を巡り写真が載っていた当時の雑誌「ライフ」「ヴュ」の原本を探す話、ニューヨークで美術館やICPで見た写真・得た写真から新事実を発見していく過程。そして最後はキャパがこの写真を発表した後、真にキャパになっていく過程と、この写真を超えていこうとするキャパの生き様、そして最後の2枚の写真と沢木氏が書く文章が残す余韻。それは小説ではなく真実だからこそ紡ぎだせる重さだった。

 「あとがき」まで含めてひとつの作品として美しい物語だった。


以下メモ

NHKスペシャル
http://www.dailymotion.com/video/xxcgip_yyyyy-yyyyy-yyyy-yyyyyyy_creation#.UW9_s8o4yzE

この本で興味を持ったので
『ロバートキャパ写真集 Photographs』 訳・解説 沢木耕太郎 を読んでみた。
4163803009フォトグラフス―ロバート・キャパ写真集
ロバート キャパ 沢木 耕太郎
文藝春秋 1988-06


1988年の本。いろいろな発見があった。
写真をひととおり眺めた後、沢木耕太郎の解説を読むと書いてあった「彼は本質的には写真家ではなくジャーナリストであったのだ」という言葉にとても共感できた。
写真を見ると大戦へ向かう社会、大戦中、そして戦後と、その時代の空気を感じることができる。

そしてその解説に書かれているのが、「崩れ落ちる兵士」に対する真贋論争。
そのなかで沢木は「彼はまたそれによって大きな十字架を背負うことになった」という言葉を書いている。そう、彼は25年以上前からずーっとこの件が心に引っかかっており、ついに彼なりに結論を導き出したのだ。これに気付いてから『キャパの十字架』の凄みを一層感じることになった。

『キャパの十字架』を読んでしばらくして、司馬遼太郎賞受賞の記事が新聞に小さく載っていた。
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by vamos_tokyo11 | 2014-01-19 02:09 |


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