| 教団X 中村 文則 集英社 2014-12-15
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間違いなく凄い本。アメトーークのせいでこの手の本が好きでもない人が手に取ることによってAmazonでは不本意な評価になってると思う。(俺はどっちにも入るけど)本を読む層とテレビを好きな層には結構ギャップがあるのかもしれない。
巻末に参考文献が載ってる小説も珍しい。それを読まずとも福岡伸一・動的平衡という言葉を思い出させる前半。脳の動きも『意識はいつ生まれるのか』や『社会心理学講義:〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉 』で出てくる話だ。娯楽小説の中にこれほど多くのことが詰め込まれ、著者の思いが詰まっているのは凄いこと。
教祖の奇妙な話はカラマーゾフの兄弟の大審問官のくだりを思い出させた。案の定、ドストエフスキーの名前が随所に出てくる。こういう本を日本の小説で読んだのは初めてだ。
生きるとは何か、自分はどこから来たのか、この世は/宇宙は一体どうなっているのか、そういった(私の)小さい頃からの答えの出ない疑問に対して、著者が答えを出している。それだけで十分凄いことなのに、小説という形で表現していることが驚異的だ。
文学の力というか、物語としてしか表現できないものが詰まっている。
教祖の奇妙な話(ラスト)には現代社会の核心が。
靖国の考え方について…戦死者たちを英雄ではなく犠牲者として追悼し続ける
世界で戦争をなくそうと動く特殊な国になりたい
これらは著者のポリシーと読んだ。
2015/12/23読了