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『ウェブ時代をゆく』 梅田望夫

 「ウェブ時代をゆく」を読んで何かに駆り立てられるような気持ちになった。同時に読後は何か清々しいような気持ちにもなった。

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書 687)ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書 687)
梅田 望夫

筑摩書房 2007-11-06
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 本のこと。

 この本は新書777円(税込み)という安さで、その値段に比して3倍くらい中身の濃さだ。いわゆるビジネス書の単行本は、見てくれだけ大きくて中身が単一でのっぺりした様な安っぽいものが多い(1,000円くらいの本が特に多い)が、この本はその逆で、小さいのにぎっしりと梅田さんの想いが詰まっている。ハードカバーで売ることもできたのだろうが、梅田さんは利益を求めるのではなく、その想いを若者に伝える為に新書という形態をとったのかもしれない。

 梅田さんは前著「ウェブ進化論」を「文明論之概略」に、本作「ウェブ時代をゆく」を「学問のすすめ」になぞらえている。ついひと月ほど前に偶々「学問のすすめ」を読んだばかりだったので、その意味するところがよくわかった。と、同時に梅田さんは慶応義塾出身なので「在野にて世の中を良くする」という福沢諭吉の思想が貫かれているのがわかる。梅田さんのブログを読んでいてもそういう意識があると感じる。

 自分のこと。




 僕自身の現状は「高速道路」を走りきって「高く険しい道」を極めるほど勤勉ではないし、会社を飛び出して「けもの道」を模索することもしていない。「好き」を貫くどころかむしろ自分が本当に「好き」なことってなんだろうという状態だ。さらに勤めている会社の規模からすると「大組織」というには中途半端な中組織で、その中でも「組織のプロ」を目指して先頭を走っているわけでもない。

 このように30代半ばになっても未だにとにかく中途半端な感じなのだが、この本を読むと、自分の将来をもっと真剣に考えて自らの「好き」は何なのか、どう生きていきたいのか、というのを考えざるをえない。自分のキャリアを考えるというのは「当たり前」のことなのだが、その「当たり前」を実行してこなかったツケが今来ている。でも、このタイミングでこの本にそれを改めて指摘してもらえたことは決して無駄ではない。

 自らのキャリアを考えるという「当たり前」のこと。それと今回考えた将来について感じたことの間にある決定的な違いが「高速道路」論だ。とにかくこのままではどんどん引き離されていってしまう、というある種の恐怖感を感じた。誰に引き離されるのかというと、それは自分が「成れるもの」からどんどん乖離していくという恐怖だろうか。世の中から置いていかれるような感覚の恐怖だろうか。それとも後ろからどんどん抜かれていくという恐怖かもしれない。

 ウェブの進化がこれからも進んでいく中で、自ら成長したいと考えている人間はどんどん進化していくことが可能になっていくのだとすると、そうじゃない人間との差が加速度的に進んで行く。自分が怠惰であるからこそ感じる恐怖だ。

 ちなみに、僕には「好き」を貫くというのは無理だと思っている。この本に出てくるまつもとゆきひろさんや、石黒邦宏さんのことを読む中で、司馬遼太郎の「世に棲む日々」に書かれている吉田松陰を思い出した。とにかく”狂”の人たちなのだ。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」で羽生善治が言っていた「才能とは、一瞬のひらめきやきらめきではなく、情熱や努力を継続できる力」の言葉も思い出した。自分には”狂”を続けていく力が足りないと思っている。だからこそカズ、ゴン、イチローに魅力を感じるのだと思う。

 でもそういう「足りない人」も現実的には多いだろうし、世の中そういう人がほとんどだろう。でもそれでも何かをやってみようと思わせてくれた本だった。この本を2007年の内に読む事ができてラッキーだった。今年は例年よりも年末年始がゆったり過ごせるため、この本のメッセージをさらに読み取って、自分の将来について、来年からしなければならないことについて、じっくりと考えて過ごしてみたいと思う。
by vamos_tokyo11 | 2007-12-29 17:06 |


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