すごい本。
人を殺すとはどういうことか―長期LB級刑務所・殺人犯の告白
美達 大和
新潮社 2009-01
現在無期懲役刑で刑務所に入っている人が書いた本。
この著者自身は2人を計画的に殺害しているらしい。こういう風にあっさり書いてみたが読み始めるときはなんか異様な感じがした。小説でもなく現実に人を殺した人から話を聞くなんてことはもちろん経験したこともないわけで、それだけで非日常的な体験となる。で、その殺害した時の様子というか、そこに至る説明というか、そのあたりの生々しさはなかなかえぐい。かなり端折ってというか、事件が特定されないように簡潔に書かれているのだが、1件目の殺害のときの様子とか、ちょっと凄い。
そんな恐ろしい殺人者である著者が、神の啓示を受けたかのように公判中に反省し始めるシーンの説明(雷に打たれたように衝撃を受けたとの記述)は読み応えがあった。他にも同宿(?)の凶悪犯罪者たちにインタビューというかどういう心理で罪を犯したかを聞いて書き連ねる箇所では、受刑者たちは全然反省していないという「内部告発」に唖然とした。
もともとは『死刑絶対肯定論―無期懲役囚の主張』という本が少し話題になっていたので、それを読む前に同じ著者の最初の本を手に取ってみようと思ったわけだが、どういう背景を持つ人かというのがよくわかった。殺人犯が書いた本を読むこと自体をタブーに感じる人もいるだろうが、殺人事件や凶悪事件を起こす人間がどういう精神状態なのかというのが、客観的にわかるという意味で、読んでおいて損はない気がする。
衝撃的な本だった。読後にはちょっと戸締り用心しなきゃ、と思ったりもした。あー怖。