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『中澤佑二 不屈』 佐藤岳

 ささーっと読める本。

416371880X中澤佑二 不屈
佐藤 岳
文藝春秋 2010-08-27



 スポーツ新聞の中澤番記者(?)による中澤本。高校時代の恩師に会って聞いた話をまとめたり、中澤から聞いたブラジル時代の話を物語風にしたり、なんとかプロデビューしたあとワールドカップまで一足飛びに行く。ドイツで凹んで、田臥勇太との関係や南アフリカまで。ワールドカップ直後にタイミングよく出すにあたり、最後はワールドカップ中の逸話も盛り込んである。

 中澤のストイックさは有名だし、高校からプロに入る過程についても、もちろんその後の活躍についても有名な話ばかりなのでとりたてて目新しいことはない。それにそもそもプロの一線で活躍する選手というのはストイックに違いないものだ(だからこそ一流なのだから)。

 この本の中で初めて知ったことはふたつだけ。

 ひとつは、中澤は高校時代無名でもなんでもなかったということ。埼玉といえば高校サッカーの強豪校がひしめく地域だが、そのなかでも名の知られた選手だったらしい。周囲の指導者の間では既に有名だったらしい。そりゃそうだろな、という気もする。いくら足元が上手じゃなくても、一芸に秀でていたのだろうから余計に目立つだろうし、そりゃそうかと思った。

 それからもうひとつは今年のワールドカップ中のチームの中は雰囲気が悪かったということ。これはおもしろい。大会直前にキャプテンを外された中澤の心境と、中心メンバー(中村、楢崎)がスタメンを外されたいったことによりことによりチームの雰囲気は悪くて崩壊直前だったということ。まぁ、そっちサイドだけで取材すればそうだろな、と思わなくもないが、いかにもスポーツ新聞記者の穿ち過ぎな書き方に見えた。2010年に代表が始動したときから雰囲気は最悪だったわけで、その流れをぶったぎったような書き方には違和感を覚えた。というか、なんかここに関してはあんまり読む価値がない。中村や楢崎はそういうつらい状況に置かれながらもfor the teamで戦ってきたのにもかかわらず、それを貶めているような気がしてならなかったからだ。

 ブラジル時代によくしてもらった家族の話とか取材されていれば、また違った趣のある本になってたと思うのだが、いろいろごちゃ混ぜでとっ散らかった印象の本だった。雑誌や新聞記事の寄せ集めのような体裁で本としてはイマイチ。ワールドカップ特需を狙ったものだったからしょうがないか。ちなみに中澤選手の素晴らしさを否定しているわけではないのでお間違いなきよう。
by vamos_tokyo11 | 2010-12-23 12:55 |


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