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『フェイスブック 若き天才の野望』 デビッド・カークパトリック

今年一番面白かった!
前回書いた『ザッポス伝説』を越えました(あれもメチャ面白いけど)。

4822248372フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)
デビッド・カークパトリック 小林弘人 解説
日経BP社 2011-01-13


 『ザッポス伝説』もそうなんだけど、この手の何もないところから巨大企業ができあがっていく話は面白い。ただ単に物語としても面白いわけで、小難しいことは何もいらない。だって創業5・6年でトラフィック数がGoogleについで2位になって今年にはトップになると言われてて、人口(登録数)の多さから中国・インド・フェイスブック(2010年半ばでユーザ数が5億人、今7億人!)といわれるような企業(という単語を使うとちょっと雰囲気が変わるが間違いなく企業)のインサイドストーリーなのだから面白くないわけがない。

 この本はマーク・ザッカーバーグがハーバードの寮でthe Facebookを立ち上げてから、出版(2010年初頭か)時点までの軌跡を描いたもの。作者はフォーチュン誌の著名ジャーナリストであったが、この本を書くために会社を辞めてフリーランスになったそうだ。本の中身はとにかく濃い。でっち上げではなく、細かな取材を繰り返したということで、とにかく深い。

 この、めちゃくちゃ面白い破天荒な物語の中で興味深かったのは3つ。ひとつは『ザッポス伝説』のときにも出てきたが買収の話。Facebookはハーバード一校の在校生・職員・卒業生だけの閉鎖的なサイトとして始まるわけだが、それが数校、数十校、全米全体へ、高校へ、そして全体へと広がって登録者数が爆発的に増えていく中で、そのトラフィック数目当てに買収の話がどんどん出てくる。しかし、この話で興味深いのはどんな買収金額を提示されても売らなかったことだ(各年度の価値はこのサイトに載っていた)。本の中にも買収の提示のたびに断ったり、迷ったけどやっぱり売るのを止めたりというのが繰り返されている。10億ドルの買収提案を断るなんて普通できないでしょ。ザッカーバーグには尋常じゃないものを感じる、というか尋常じゃない(笑)。





 もうひとつはFacebookのプラットフォーム戦略の話。これはインフラとしてのSNSを提示して、アプリなどご自由にどうぞ、というmixiがやっているあれと一緒だ。だがFacebookはmixiよりも1年か2年か前にこれをやっている。もちろんmixiはこの戦略の重要性に気づいたからやったのだろうが、これによって日本のSNSが携帯電話のようにガラパゴス化してしまったのではないだろうか。本を読みながら感じたのは(本の中にも出てくるのだが)、FacebookがSNSでトップを取れてない主要国はロシア・ブラジル・中国・日本なのだ。BRICsは政治的な問題の匂いがするが、日本のそれは単純に言語と先行するSNSとの問題だろう。だからこそ、まだFacebookのヘビーユーザでない自分はこの本を客観的に読め、自分もユーザ目線ではないところで読めたのだろう。本の中で物足りなかったのは、このプラットフォーム戦略についてザッカーバーグはいつ頃考えていたのだろうかという点。写真のアップロードが爆発的に支持されたことによって着想を得たように書かれているが、どういう発想でそうなっていったのか、これをやることによって将来をどう見通していたのか、ザッカーバーグの内部、野心に迫った記述がほしかった。

 3つ目はジャーナリストとして著者が書き出す実名主義に関する問題点だ。家庭の自分、個の自分、会社の自分、サッカーファンの自分、音楽ファンの自分、旅行したい自分、全部自分だがそういうセグメント分割はありえないという。全部ひとつの自分としてさらさなければならない、とザッカーバーグは考えていたらしい(今はわからない)。実際に実名で出ていることでさまざまな問題が起きていることも書かれている。これについては自分で判断してリスクテイクするしかない。社会的に「自己責任」が当然である彼の国と我が国との差を感じたりもする。ただ、結局はこれからの世の中はある程度Facebookのような実名主義がベースとなって世界へ広がっていくと思うし、特に日本に閉じないようにするにはこれしかないと思う。世界のデファクトスタンダードがそうなっているのだから、それへ繋がっていくしかないだろう。

 自分としてはSNSもブログもいろいろ使い分けていきたいけれど、どこまでそれが続くのか。。。


より深く知りたいならこちらの書評がおすすめ。
ほかのFacebook本と比較されているので、より現実に即している、と思われる。
by vamos_tokyo11 | 2011-06-11 00:13 |


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