いい!
読後感が不思議だ。内容はドロドロとした起業家の苦労の日々(ご本人は苦労だなどと思っていない様な書き方だが)についての話だが、読んだ後にさわやかで前向きな気持ちになった。著者が起業するきっかけとなったエピソードから、ご主人の看病に軸足を移して社長を退任する話などを経て現在までのDeNA社と著者の半生が描かれている。『ザッポス伝説』や『フェイスブック 若き天才の野望』もそうだったが、やはりこういう起業にまつわる信じられないような働きから生まれる物語は面白い。
とはいえ、この本に清々しさを感じるのは私がDeNAという会社をほとんど知らないからかもしれない。モバゲーの話であったり、ゲームだと思ったらSNSであったり、それが子供を巻き込む社会問題になったり、プロ野球球団を買収したり、S&B食品の陸上部を買ったり、いろいろと話題を提供している。会社のことを知らないのでなんだか節操のない行き当たりばったりの企業に見える。まぁ、本を読んでもイマイチ会社の理念はわからない。会社が目指したいことはGoogleを超えるインパクトだということが書かれていて、それはわかるのだが、世の中変えたいというのが、それが善行なのかどうなのかはわからないのだけれども。
ただ、著者が正直に書いているように、経営するというのはそういう面もあるのだろう。コンサルタントとしてSo-netに勧めていたオークションサイトを自分でやることになり、それを黒字化するためにもがていくなかで、可能性を感じるものにどんどんチャレンジしていくという形。そういうわけで何も知らない自分からは変な会社に見えてしまった。でも読後に不思議と元気が出る。そんな本。