非常に優れた知見を与えてくれる本。
こういう本がもっと注目されるべきだと思うのだが、2011年のあの頃に比べると皆興味がなくなってきているように見える。
僕が毎日乗る大江戸線には、都営だからだろうが、福島県をサポートするような広告がたくさん掲示されている。その中には農産物のフェアもある。それを眺めながら「桃かぁ。福島の特産品だよな。でも大丈夫なのかな」といったような疑問が浮かぶのだ。でもこの本を読めばリスクの程度が如何に低くなっているかがわかる。
自分がとり得るリスクというのがあると思う。自分で判断する基準。人は分からないことに不安を抱くわけで、この本ではそれを素人にも分かりやすく書いてくれている。しかも客観的に(つまり数値で)。安全とも危険とも書くようなことはしていない。基準に対してどうだ、ということを数字で表す。そこがこの本に信頼をおけることのひとつの理由だろう。
あれから2年経って、これまで学者の先生たちが継続的に調べてきたことを明確に数字の裏づけを持って、現在の状況を教えてくれている。放射性物質(核種)は土に降下すると、それが土壌に固定され、雨にも流れにくいらしい。だからそこから植物に吸い上がる核種は極めて少なくなる。また、動物でも飼料や土から取り込まれた核種は代謝とともに多くが出て行っている。それを数字で示している。こういう情報を得られると、今後どのように進んでいくのかがわかる。農業は福島でもやっていけることが分かる。
キノコが1960年代のセシウムを未だに蓄積しているのが驚きだった。世界中で核実験が繰り返されていた1960年台のセシウムの降下の多さにも驚いた。
良書。
(12月読了)