やや期待はずれ。
EU圏をドイツが支配していて、ベネルクスのようなドイツ圏とフランスのような自主的隷属国(著者はフランス人)、ポーランドのようなロシア嫌いの衛星国、南欧のような事実上の被支配者国などを足し合わせると人口、経済規模でアメリカを上回る。これをドイツは意図して動いている。という話は面白いし、ヨーロッパに対する見方として参考になる。
ただ、文中に都合の良いデータ解釈や恣意的なグラフが出てくるので胡散臭さを感じさせる。もともとネットのインタビュー記事を集めて翻訳したとあるように、本にすると陳腐な内容。話し言葉であるために口を滑らせたかのような表現もあり、客観性に欠けるところも。
EUがドイツに支配され、ますます発言力を大きくしてきている事実は分かる。しかし、本文の中でアメリカに対するドイツという捉え方はありつつも、現実は本書の分析よりももっと大きくなっている中国があり、世界をドイツとアメリカで語ろうとするのは無理がある。
ドイツをアメリカ以上に差別的だと捉えたいるのも無茶だ。ドイツ人以外はドイツ連邦議会の選挙に投票できないから、という。しかしこれはドイツの問題というよりもEUの問題であり、論理のすり替え。ここで分かるのは、いかにEUが限界に近づいているかということだろう。
2015/8/19読了